払うべき税金を減らせる、かつ、解約時や満期に掛金を受け取れる制度として
1.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
2.小規模事業共済
3.生命保険
4.確定拠出年金(iDeCo)
がある。
ただ、これらの控除や経費計上を利用しての節税では手元に現金を残せない。現金を手元に残せないだけでなく、現金を払い戻すにも制限がある。
事業の多くは安定しておらず、長期で収益が得られるとは限らない。節税にこだわりすぎて現金が無くなり、事業や生活が苦しくなったら本末転倒だろう。
したがって、この記事では掛金を払い戻しやすいかどうかなど
▶ 各種控除ごとのしばり
を紹介するとともに
▶ 各種控除の賢い利用方法
についても詳しく述べていきたいと思う。
各種控除ごとに見る現金化(解約)する際のしばり
各種控除を利用する場合も、積み立てた掛金を払い戻す方法は頭に入れておくべきだ。急に事業が上手くいかなくなることは多々ある。キャッシュが不足すれば積み立てた掛金を下ろしたくなるだろう。
経営セーフティ共済、小規模事業共済、生命保険は解約すれば掛金の払い戻しを受けれる。しかし、解約で掛金が100%戻ってこないこともある。また、確定拠出年金(iDeCo)は原則として、60歳以上にならないと引き出せない。
これら掛金を払い戻す際のしばりについて、まとめると下記のようになる。
現金化(解約)する際のしばり | |
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経営セーフティ共済 (中小企業倒産防止共済) | 納付期間が12ヶ月未満の場合、掛金は一切払い戻せない。任意解約の場合、40ヶ月(3年4ヶ月)以上納付しないと、掛金は100%以下の金額しか戻ってこない。 |
小規模事業共済 | 納付期間が6ヶ月未満の場合、掛金は一切受け取れない。任意解約の場合、240ヶ月(20年)以上納付しないと、掛金は100%以下の金額しか戻ってこない。 |
生命保険 | 保険商品による。基本的に一定の加入期間が無いと、解約によって受け取れる金額は掛金の100%を下回る。 |
確定拠出年金(iDeCo) | 60歳未満では引き出せない(死亡したり法で定められた障がいの状態になった場合を除く)。 |
それぞれ詳しく紹介していく。
1.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
毎月の納付を止め、経営セーフティ共済の掛金を払い戻しを受けるには解約をしなければならない。経営セーフティ共済の解約には「任意解約」「みなし解約」「機構解約」の3パターンがある。
任意解約:加入者が任意でいつでもできる解約
みなし解約:加入者の死亡、法人で加入していた場合は解散・分割した場合の解約
機構解約:12ヶ月分以上の掛金の滞納、共済金の貸付けに不正行為があった場合に中小機構側が行う解約
任意解約、みなし解約、機構解約における掛金納付月数からみた支給率(戻ってくる掛金の%)をまとめると下記のようになる。
1ヶ月から11ヶ月しか納付していない場合、どの解約でも掛金は戻ってこない(smrj.go.jpより)。逆に40ヶ月以上納付していれば任意解約でも100%の金額が返ってくる。40ヶ月の納付で100%の払い戻しを受けれるため、少額でも早いうちから加入すべき共済と言えるだろう。
解約時の支給率について更にくわしくは機構の下記ページを参考に。
解約せずにキャッシュを受け取る方法として、掛金の範囲での借入がある。経営セーフティ共済では掛金の30万円以上(5万円単位)で借入ができる。年利も0.9%と低金利である。払込んだ掛金が担保になっているため、審査なども不要だ。くわしく知りたい人は下記ページを参考に。
2.小規模事業共済
小規模事業共済の掛金を受け取る場合にも解約をしなければならない。解約で戻ってくる掛金は共済金と呼ばれ、契約者の立場や請求事由によって種類が異なる。
共済金には共済金A、共済金B、準共済金、解約手当金の4パターンが存在する。
共済金A :加入者が個人事業を廃業もしくは亡くなった場合の解約。納付月数が6ヶ月未満の場合、共済金の受け取りは不可。
共済金B:180ヶ月以上納付しており、かつ65歳以上の人の解約。納付月数が6ヶ月未満の場合、共済金の受け取りは不可。
準共済金:個人事業から法人成りしたことによる解約(小規模事業共済は個人事業主しか加入資格がないため)。納付月数が12ヶ月未満の場合、共済金の受け取りは不可。
解約手当金:加入者が任意でいつでもきる解約、もしくは掛金を12か月以上滞納した場合などになされる機構解約で受け取れる共済金。納付月数が12ヶ月未満の場合、共済金の受け取りは不可。
掛金月額1万円で5年(60ヶ月)加入した場合の共済金の額は下記のようになる。
smrj.go.jpより。払うべき税金を減らすことができるだけでなく、上記のように共済金の種類によっては掛金以上の額を受け取れる。ただし、任意による解約(解約手当金)で、かつ掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満の場合は掛金合計額を下回る。つまり、今まで支払った金額以下の額しか払い戻しが受けられない。
共済金の額の算定方法について更にくわしくは下記ページを参考に。
小規模企業共済にも、解約せずにキャッシュを受け取る方法として借入がある。小規模企業共済では掛金の7割から9割の範囲、10万円以上(5万円単位)で借入ができる。
年利は1.5%とこちらも低金利である。審査不要である。くわしく知りたい人は下記機構のページを参考に。
3.生命保険
生命保険には掛け捨て保険(掛金が返ってこない保険)と積み立て保険(掛金が返ってくる保険)がある。積み立て保険では税金の控除を受けつつ、掛金の払い戻しを受けれる。もちろん、積み立て保険でも商品によって解約時の払い戻し金額は変わってくる。納付期間を含む商品の契約条件によっては払い込んだ金額以下しか戻ってこない。
現金化する際のしばりについては保険商品によるため一概には言えない。
4.確定拠出年金(iDeCo)
死亡したり法で定められた障がいになった場合を除き、60歳未満で引き出すこと、つまり現金化はできない。ただし、加入期間により受け取れる金額の割合が変化することはない。
確定拠出年金は金融商品への投資を行うため、掛金だけでなく投資成績によっても受け取れる金額が大きく変わる。
各種控除の賢い利用方法
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)、小規模事業共済にかんして言うと、加入期間が長ければ長いほど掛金に対する払い戻し金額の割合は多くなる。したがって、少額でも良いので早いうちから加入すべきである。小規模企業共済は月1000円、経営セーフティ共済は月5000円から積み立てを始められる。また、収入が減り、現在の掛金が負担になりそうなら、減らすこともできる。
積み立て保険について、純粋な節税目的なら「じぶんの積立」にだけ加入しておけば良いだろう。じぶんの積立への加入は現金化のしやすさで見ると経営セーフティ共済、小規模事業共済などより優先順位が高い。
また、60歳未満では死亡した場合などを除き、原則引き出せない確定拠出年金も「合法的な財産隠し」と呼ばれるぐらい老後の財産を守り、作る手段としては有効である。
下記ではあまり知られてない「じぶんの積立」「確定拠出年金」の利用方法について詳しく紹介していく。
生命保険控除枠が残っている人におすすめの商品「じぶんの積立」
生命保険の控除枠を利用するためだけに加入したいなら「じぶんの積立」という保険がおすすめである。この商品は任意でいつ解約しても100%の金額が戻ってくるのにくわえて利息も付く。満期なら掛金が103%の金額になって戻ってくる。
もちろん、一般の生命保険料控除が使えるため節税にも使える。
デメリットは上限金額が毎月2万円、5年間で最大120万円までと低いことがあげられる。また、こういった保険は節税保険として金融庁に問題視されている。

したがって、今後は保険商品として認められない可能性もある。そうなれば生命保険控除を使えなくなるだろう。
控除が使えるうちに加入しておいた方が良いだろう。
合法的な財産隠しとして使える「確定拠出年金」
確定拠出年金が合法的な財産隠しと言われるゆえんは60歳以上にならない限り「取られない」財産だからである。たとえば、自己破産した場合でも、借金を負っている間に積み立てておいた確定拠出年金分は取られない。また、確定拠出年金の有無や掛金総額で生活保護が受けれるかどうかだったり、受給額が減ることもない。いざとなれば肉体労働でも何でも働くという人なら、確定拠出年金への積み立てとリスクのある挑戦を60歳まで続けて良いだろう。
ただし、離婚時などは、確定拠出年金の積み立て金も資産として換算した上で慰謝料などが請求されたケースがある。

また、確定拠出年金が制度として、現状のまま変わらないことも条件となる。
個人的な見解として、制度が続く限りじぶんの積立の加入は必須で、経営セーフティ共済、小規模事業共済にかんしては事業を長期で続ける予定なら少額でも良いので早いうちから加入すべきかと思う。
確定拠出年金は現金に余裕のある人はもちろん、リスクのある挑戦を老後までし続けたい人におすすめの制度である。
しかし、上記でも述べたように、給与所得だけの会社員は経営セーフティ共済、小規模企業共済を利用できない。副業として事業収入がある場合に加入できる制度だ。
副業で収入が増えたサラリーマン向けの節税に絞ってくわしく知りたい人は下記記事を参考に。
