結論から言うと、会社員は経営セーフティ共済、小規模企業共済いずれにも加入できる。ただし、すべての会社員が加入できるわけではない。また、給与所得しかない会社員はいずれにも加入できない。副業などによる事業所得が必要であり、本業以外のアルバイト(給与所得)があっても同じ結論になる。
また、経営セーフティ共済は「会社員として行う仕事との関係性が無い」ことが加入条件になる。小規模企業共済は会社員になってからは加入できないなどの制限があり、加入要件は経営セーフティ共済よりも厳しい。
経営セーフティ共済に加入すれば毎月20万円まで掛金を増やせる。掛金はすべて経費として計上できるため、黒字額を減らせる。小規模企業共済は月7万円以内、500円単位で掛けれる。掛金は課税対象となる所得から控除できる。
自営業者(個人事業主)はもちろん、副業で事業を行っている会社員も、払うべき税金を調整するために、これら制度への加入は検討すべきだ。
この記事では会社員における
▶ 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の加入条件
▶ 小規模企業共済の加入条件
から
▶ 経営セーフティ共済と小規模企業共済へ加入するメリット
についても詳しく紹介していきたいと思う。
会社員における経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の加入条件
経営セーフティ共済へ会社員が加入できないのは
①会社員として行う仕事と関係性がある
②事業(副業)を行っていない
以上に当てはまる場合である。
経営セーフティ共済は中小企業者および個人事業主が加入できる。会社員の場合、会社員として行う仕事と副業の事業が異なっていれば加入できる。ただし、加入できるのは開業届を出してから1年以上となり、 加入の際には審査もある。会社員として行う仕事との類似性も、この審査の際に判断される。
会社員になってから副業を始めても経営セーフティ共済には加入できるし、個人事業主のときに加入し、自営業から会社員になっても継続加入できる。
ただし、当然のこととして、給与収入しかない会社員は加入できない。本業以外に事業所得がなければ経営セーフティ共済には加入できない。
事業所得(自分でビジネスをすること)により稼ぐ方法については下記記事を参考に。

経営セーフティ共済に興味のある人、加入を検討している人は下記ページも参考に。
会社員における小規模企業共済の加入条件
小規模企業共済へ加入できるのは個人事業主を含む小規模事業者である。ここで言う小規模事業者とは、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員である(加入資格|小規模企業共済(中小機構)より)。
また、事業所得のある小規模事業者でも、会社員になってからでは小規模企業共済へ加入できない。加入時には、正社員として雇用されていない個人事業主の状態でなければならない。したがって、会社員になる前、個人事業主のときに加入しておかなければならない。くわえて、小規模企業共済に加入している個人事業主がサラリーマンになった後、小規模企業共済を継続できるかどうかは個別相談になる。継続加入できるかどうかも担当者の裁量になる。原則として、会社員が小規模企業共済へ加入するのは難しいと言えるだろう。
経営セーフティ共済に興味のある人、加入を検討している人は下記ページも参考に。
経営セーフティ共済と小規模企業共済へ加入するメリット
経営セーフティ共済と小規模企業共済へ加入するメリットとしては
1.節税効果
によるものが大きい。正確には税金の「支払時期の調整」先送りになる。所得が少ない時は払うべき税金を減らせるし、事業が赤字の年は無課税で掛金の受取もできる。
経営セーフティ共済および小規模企業共済掛金は解約するまで引き出せない。しかし、
2.掛金の範囲で借入
ができる。しかも、年1%前後の低金利である。
下記でそれぞれ詳しく紹介していく。
1.節税効果
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は掛金月額5000円から20万円までの範囲内、5000円単位で掛けれる。毎月の掛金は法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に全額算入できる。
小規模企業共済は月1000円から7万円円の範囲内、500円単位で掛けれる。掛金は全額を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できる。
確定申告書A「所得から差し引かれる金額」に「小規模企業共済等掛金控除」の項目がある
小規模企業共済で積立てた掛金は「共済金」「解約手当金」として将来的に給付を受けれる。給付では掛金の80~120%を受け取れる。
経営セーフティ共済と小規模企業共済に加入すると、最大で毎月27万円、年324万円も所得金額を減らせる。324万円のうち、20%から50%払うべき税金を減らせるため、年に64.8万円から162万円まで節税が可能になる。
所得は現金に残して(貯金して)残しておくよりもこうした経費や控除へ使っておいた方が良いだろう。ただし、掛金の受取時には税金がかかる。したがって、収入の少ない時や事業が赤字のときに受け取った方が良いだろう。
また、長期で加入しないと、掛金も100%の金額が戻ってこない。したがって、少額からでも早いうちから始めておくべきだ。
経営セーフティ共済と小規模企業共済の加入方法を含む個人の節税対策について更に詳しくは下記記事を参考に。

2.掛金の範囲で借入
経営セーフティ共済と小規模企業共済へ掛金を払っていくと、その分手元に残る現金(キャッシュ)も減ってしまう。しかし、経営セーフティ共済は解約手当金の95%、小規模企業共済は掛金の7~9割を上限に借り入れができる。しかも、経営セーフティ共済は年利0.9%、小規模企業共済は1.5%と低金利である。払込んだ掛金が担保になっているため、審査なども不要である。小規模企業共済は10万円、経営セーフティ共済は30万円から借り入れができる。
借入可能な額まで掛金が貯まると借入申込書ハガキが届く。借入は商工組合中央金庫の各支店および本店で可能である。印鑑証明や実印などを持参し、商工組合中央金庫へ行けば借入申込当日にキャッシュを受け取れる。
経営セーフティ共済と小規模企業共済の借入制度をまとめると下記のようになる。
料率 | 経営セーフティ共済 | 小規模企業共済 |
---|---|---|
借入可能額 | 解約手付金の最大95%。 30万円以上(5万円単位) | 掛金の7~9割。 10万円以上2000万円以内(5万円単位) |
借入期間 | 1年 | 100万円以下:6か月、12か月 105万円~300万円:6か月、12か月、24か月 305万円~500万円:6か月、12か月、24か月、36か月 505万円以上:6か月、12か月、24か月、36か月、60か月 |
利率 | 年0.9% | 年1.5% |
返済方法 | 期限一括償還 | 借入期間が6か月または12か月の場合 : 期限一括償還 借入期間が24か月、36か月、60か月の場合 :6か月ごとの元金均等割賦償還 |
延滞利子 | 年14.6% | 年14.6% |
返済期日までに一時貸付金の返済がないと、年14.6%の違約金(延滞利子)が課せられる。返済期日から5か月を経過しても返済がないときは、納付された掛金を取り崩して返済および違約金の納付に充てられる。
また、経営セーフティ共済では取引先事業者が倒産した際に、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられる。
経営セーフティ共済と小規模企業共済はいずれも税金の調整、もしものときの保険として使える。掛金を低金利で借り入れできることを考えれば、利益となる現金をそのまま銀行などへ貯金しておくよりも有益だろう。
日本には経営セーフティ共済や小規模企業共済のような控除制度がいくつもある。節税対策に使うにも、現金化のしやすさで掛金の優先順位を決めても良いだろう。くわしくは下記記事を参考に。
