中年フリーターで懸念されるのは年齢が上がっても収入が低い水準でとどまり、広い意味での保険が不十分な点である。
収入が低い水準でとどまるだけでなく、広い意味での保険が不十分な点は中年フリーターの金銭的な問題に繋がっている。逆に言えば、中年フリーターの問題もお金さえあれば全て解決する。金銭的に余裕があれば中年フリーターでも収入や保険は問題にならない。もちろん、楽しく生きるには金銭的な部分だけでなく、時間や労力的な余裕(リソース)も求められる。
十分なリソースがあれば中年フリーターでも正社員以上に生活が充実したり、将来の不安も少なくなるだろう。十分なリソースはお金を稼がなくとも作り出せる。難しく考える必要は無く、結局、中年フリーターでもリソースを作ることに集中すれば、問題のほとんどは解決するのである。
この記事では
▶ 中年フリーターが抱える問題
を明確にした上で
▶ フリーターにしかできないライフスタイル
▶ 中年フリーターでも楽しく生活していく方法
まで具体的に述べていきたいと思う。
中年フリーターが抱える問題
中年までフリーター、バイトによる生活を続けるリスクについて、正社員などの正規雇用者と比較し、具体的にあげると
1.職歴がキャリアとしてプラスにならず、給与が増えていかない
2.国民健康保険では各種手当金が出ない
3.年金受給額が正社員に比べて平均10万円ほど少ない
以上のようになる。
それぞれ下記で詳しく紹介していく。
1.職歴がキャリアとしてプラスにならず、給与が増えていかない
通常のバイトでは高い専門性の仕事ができず、継続して勤務しても給料アップにつながるようなスキルは身につかない。総務省の出している就業構造基本調査結果 によると、2016年、正社員といった正規雇用者の平均年収が493.7万円、フリーターといった非正規雇用者の平均年収が175.1万円となっている。正社員とフリーターの間には約320万円もの収入差があるのだ。
また、転職する際にもバイト期間はキャリアとして評価されない。
それだけでなく、単純作業では年齢が上がって体力が落ちれば、若いときよりも稼ぎづらくなる。費やした時間や労力に対し、収入は増えるどころか減っていく可能性もあるのだ。したがって、多くの中年フリーターは金銭的な余裕が正社員よりもない。
2.国民健康保険では各種手当金が出ない
フリーターやアルバイト、パートで生活している人は多くが国民健康保険へ加入し、支払っている。正社員や一定の勤務日数を満たしたフリーターは社会保険や失業保険に加入している。
この国民健康保険と社会保険の違いは大きくわけて2つある。1つが手当金の有無で、もう1つが保険料である。社会保険の場合は出産手当金や傷病手当金が出るため、出産や怪我・病気で休んだ場合も手当金が支給される。しかし、国民健康保険にはこうした手当は出ない。また、家族構成や収入、市町村による違いは出てくるものの、同じ給与なら毎月支払う保険料の負担は国民健康保険の方が大きくなる。
失業保険(雇用保険とも言う)も公的保険制度の一種である。突然の解雇や精神疾患になったのが理由の退職はもちろん、自己都合で退職した場合でも1日あたり2000円から8000円程度の手当を受けれる。手当の給付を受けれる日数は「退職理由」「退職時の年齢」「勤続年数」によって、90日間から330日間まで違いが出る。
ちなみに、社会保険と失業保険へはフリーターでも条件を満たせば加入できる。
フリーターが社会保険、失業保険に加入できる条件
フリーターでも条件を満たせば社会保険、失業保険へは加入できる。フリーターの加入条件をまとめると下記のようになる。
社会保険の加入条件 | 失業(雇用)保険の加入条件 | |
---|---|---|
労働時間 | 1週間に働く時間と1ヶ月の働く日数が正社員の4分の3以上。 同じ会社の正社員が1ヶ月に20日働いている会社なら15日以上。 | 1週間の所定労働時間が20時間以上 |
雇用期間 | 2ヶ月以上働いている。1ヶ月の短期バイトでは加入不可。 | 31日以上の雇用見込みがあること |
備考 | 正社員の4分の3未満しか働いてなくても「5条件」を満たすなら、 社会保険へ加入させなければならない(2016年10月以降)。 |
社会保険についてはフリーターでも正社員の4分の3以上勤務しているなら社会保険へ加入できる。この4分の3基準を満たさない場合でも
①労働時間が1週間に20時間以上
②雇用期間が継続して1年以上見込める
③給与が月額8.8万円以上
④学生ではない
⑤従業員が501人以上いる会社に勤務している
以上の5条件を満たすなら、社会保険、厚生年金へと加入できる。
条件を満たしているのに、会社が加入させていなければ法律違反になる。社会保険ではなく国民健康保険に加入すれば、自己負担額は増えてしまう。また、失業のリスクを考えれば失業保険へ加入しても損ではない。条件を満たす人は加入しているかどうかの確認をした方が良いだろう。
3.年金受給額が正社員に比べて平均10万円ほど少ない
フリーターの多くは国民年金に加入している。条件を満たした一部のフリーターや会社員は厚生年金へ加入できる。
65歳から受け取れるこれら年金は国民年金か厚生年金かで受給額に大きく差が生まれる。受け取れる年金の額を全体で平均すると、厚生年金が月約15万円なのに対して、国民年金は月約5万円、つまり、平均して毎月10万円ほど少なくなる。
会社員なら現役時代に十分な収入を得て、老後に備えた貯蓄もできるだろう。くわえて、老後も平均して15万円程度の年金を毎月もらえる。国民年金の加入者が多いフリーターは少ない収入にもかかわらず、老後に向けて会社員よりも貯蓄を増やしておかなければならないのだ。
フリーターが厚生年金に加入できる条件
社会保険と同じように、フリーターでも正社員の4分の3以上勤務しているなら厚生年金へ加入できる。
この4分の3基準を満たさない場合でも
①労働時間が1週間に20時間以上
②雇用期間が継続して1年以上見込める
③給与が月額8.8万円以上
④学生ではない
⑤従業員が501人以上いる会社に勤務している
以上の5条件を満たすなら、厚生年金へと加入できる。
フリーターにしかできないライフスタイル
近年になって、フリーターでも社会保険と失業保険、厚生年金へ加入しやすくなり、昔よりは広い意味での保険も充実してきている。しかし、給与や給与額によってもらえる額が大きくなる厚生年金については、正社員と比べるとまだまだ差がある。収入が増えなければ生活に余裕も作れない上、老後の年金受給額も国民年金と大して変わらなくなってしまう。結局、フリーターに対する社会保障が充実しても、正社員並みにお金を稼げるようにならなければ、問題の解決にならないのだ。
また、社会保険や失業保険へ加入するために正社員の4分の3以上の労働や5条件を満たす必要があるかは正直疑問である。フリーターの利点は柔軟にバイト以外の時間を調整できたり、金銭以外の余裕を作りやすい点にある。保険や年金のために労働時間を増やせば、生活の自由度やお金以外の余裕でも正社員と変わらなくなってしまうだろう。
あえてフリーターとして生きていくなら、バイト生活者でなければ実現できないライフスタイルを目指すべきだ。
それが
1.バイトで稼ぎながら事業を行う
もしくは
2.セミリタイア
という生き方になる。
1.バイトで稼ぎながら事業を行う
フルタイムで仕事をしている会社員の多くは副業を行うのに十分な時間を持っていない。フリーターであれば働く時間も抑えられるため、給与収入を減らしてでも働く時間を減らし、余った時間や労力を事業へ注げる。
フリーターは会社員よりも時間や労力のリソースを作りやすい環境にある。バイトのシフトを休みづらい環境にあっても、具体的に事業をやり、事業をやっていることをバイト先に伝えれば、それを理由に休みやすくなる。つまり、事業を実際に行うことで時間的、労力的なリソースを確保する根拠にもなるのだ。
また、事業を行えば生活や趣味の支出について、一部を経費へと計上できる。

経費を計上すれば支払うべき税金が減る。給与所得から引かれた税金も戻ってくるのだ。特に、趣味を事業化すればそれだけで多くの金銭的なリソースを作り出せる。人によっては事業化しないこと自体が損とも言えるだろう。
もちろん、経費計上の目的で実態の無いビジネスをでっちあげれば追徴課税のリスクも伴う。事業を行うならサラリーマン並みの金銭的なリソースを手に入れるために、本気で利益の追求を目指した方が良いだろう。
事業は40代、50代から5、10、20年と長期計画でも良い。この間、月25万円の収入をプラスして作り出せれば上でも紹介した正社員との平均年収の差「約300万円」を埋められる。65歳以上になってもこの額がキープできれば、平均で月15万円の年金をもらえる正社員の老後よりも満足のいく生活を送れるだろう。
中年フリーターなら短期および長期で時間や労力を作れる。余裕のある範囲で、持続可能なビジネスに取り組むべきだ。
趣味の事業化といった1からビジネスを作り出すのが難しい場合、事業よりもバイトに近い配達系のフリーランスに挑戦してみても良いだろう。

配達系のフリーランスは近年注目されている新しい稼ぎ方、働き方になる。
バイト以外の余った時間や労力を自分の好きな、自分に合った事業に費やすことで生活をより楽しめるだろう。
2.セミリタイア
セミリタイアとは完全にリタイアしないまでもリタイアに近い生活を送ることをいう。フルタイムでの労働を避け、時間的、労力的なリソースを作り、のんびりと暮らす生き方である。
はじめでも述べたように、中年フリーターの問題もお金さえあれば全て解決する。しかし、全員が全員、こうした問題を解決できるぐらいのお金を稼げるわけではない。お金を稼げない、十分なお金を稼げるぐらい働きたくない人に残された選択肢としてセミリタイアがある。
セミリタイアを実現し、長期でセミリタイア生活を継続するには生活支出を抑えなければならない。金銭的な余裕がない人はどれぐらい生活支出を減らせるか?にかかっていると言えるだろう。たとえば、月5万円の生活費しかかからない人なら、月5日の労働だけでも暮らせる。
またはしばらくフルタイムで働いて、貯蓄を貯め、数ヶ月間無職の期間を作ったり、海外へ住む選択肢もある。物価の安い海外なら、人によってはホテル代、航空券代を含めても日本より安く暮らせる。こうした外こもり生活も会社員ではできないだろう。
月5万円の生活だと我慢が求められるため、多くの人には困難になる。しかし、固定費となる家賃をとことん抑えれば、月10万円の稼ぎだけで楽しく暮らすのも難しくはない。

月10万円であれば1ヶ月10日間の労働でも達成できる稼ぎになる。もちろん、バイトと事業などを合わせて稼いでも良いだろう。最近ではネットがあれば場所に縛られず稼げるフリーランスも増えている。

ネットで稼げるようになり、現在住んでいる地域や国に縛られず、広い視野で安く暮らせる場所さえ見つければセミリタイアの難易度も下げられるはずだ。
中年フリーターでも楽しく生活していく方法
まず、40代や50代になっても、フリーターから正社員にはなれる。特に、人手が不足している業界では中年から正社員になる道も残されている。
中年フリーターの社会問題は長期的なプランを個々人が建て、実行しないために起こってしまう。中年と言えど、今の時代は70、80歳まで生きるのが普通になっている。今後20、30、40年を考えて行動した方が良いだろう。
フリーターの立場が心地良かったり、あえてフリーターでいるなら金銭的な問題は把握しておくべきだ。中年フリーターで懸念される問題も単純に見れば「お金」の問題に帰結する。要は金銭的なリソースが余れば解決できる問題なのである。
正社員という選択肢を取らず、中年フリーターのままで楽しく生活したいなら「バイトだけでなく、好きな事業もおこなって十分な額を稼ぐ」もしくは「生活コストを下げてセミリタイア生活」が現実的な道になるだろう。前者は金銭的なリソースを増やす手段であり、後者では金銭的なコストを下げ、金銭、時間、労力的なリソースを作れる。リソースが余れば、その余裕からより楽しい生活を送れるはずだ。
病気や事故によって怪我を負っても、高額療養費制度がある日本では海外よりも十分な治療を受けられる。民間の保険へ加入する必要もなく、もしもの時も最低限度の生活を送れるようになっている。
金銭的なリソースが無くても、時間や労力に十分なリソースがあれば中年フリーターでも正社員以上に生活が充実したり、将来の不安も少なくなるだろう。難しく考える必要は無く、結局、リソースを作ることに集中すれば、中年フリーターの問題は解決するのである。
